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おすすめ哲学書:『哲学の道具箱』 ジュリアン・バッジーニ他 著





哲学の道具箱哲学の道具箱
(2007/02/22)
ジュリアン・バッジーニ、ピーター・フォスル 他

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「哲学を学んで何の意味があるのか」
哲学について考えたり、哲学的な何かを他人に伝えるときに、よく聞く疑問です。

哲学者や哲学が好きな人は2種類に分けられると思います。
体系として世界を理解したいという人と、僕たちが使っている概念を明晰にするためのツールとして哲学を扱う人。前者は難解な形而上学を扱いがちで、ハイデガーヘーゲルなんかが好きそう。後者は論証を基本として、こまごまとした概念分析が好きな人が多いように思います。

この本は、後者のツールとしての哲学を好む人には強くおすすめしたいと思います。
名前からして道具箱とつけられていますが、哲学で使われる論証や概念、評価基準について網羅的に書かれていて、それぞれをどのように使うか、どういう欠点や注意点があるのかが分かるようになっています。哲学の説明書のような感じです。ここで挙げられている概念は多くの哲学書の中で暗黙裏に使われていることが多いので、既知であったりすでに自分が考えているものがあるかもしれませんが、哲学書をある程度読んでいる人にとっても、考えるのに迷った場合に原点を確認するという使い方ができると思います。
「直観ポンプ」や「思考実験」など、哲学でもあまり見慣れない概念もあり、ときどき自分が考えそこねていることを見つけてハッとします。

この本は明らかに誰もが分かる書き方をしています。違う見方をすると、哲学もまた誰でも理解できるということだと思います。哲学者による哲学書の場合、新規な概念や論証が作り上げることに費やされ、解説書の場合哲学者の人生や学派についてこまごまと語られることが多いのですが、こういったことが哲学の学習の妨げになっていると思います。
哲学の学習者にとってまず必要なことは、哲学で使われる概念と、その用いられ方の習得だと思うので、上のようなことはその次の段階だと思います。初めて哲学を学ぶ人が、運良くこの本に巡り会えばどれほど早く先に進めるでしょう。
ということで、僕が初めて哲学を学ぶという人にはこの本をぜひおすすめしたいです。